とても凄絶で静かな一日

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「今、私は、いるんだかいないんだか分からない外国人(ヨーロッパ系)の友人に、ごく限定的な事例から国民丸ごと侮辱された、意識の高いSNSユーザと同じくらいハッとしたわ」 「ああいう人って、自分もその国民だっていう意識がないの、なんでなんだろうね。それくらいの特権意識があると、人生って楽しいのかな」 「タカヒロ、質問は私がしているのよ」 「そうだった。とにかく、肉体的には機械が人間を圧倒するのに、頭脳に関しては人間の脳が機械に敗れることを、やたらと大げさにとらえる人というのはいるんだ。それは筋違いというものだよ」 「納得したわ」 「これは換言すれば、人間はすでに、それぞれの専門性において機械に勝てる要素がないことを意味する」 「そのとおりね。学習したわ」 「用は済んだね。それじゃ」  再び僕は、キーボードを叩きだす。  だが数分としないうちに、またアスカからメッセージだ。 「タカヒロ、あなた、今なんの作業をしているの?」 「答える必要はない」 「そのプログラムは、私にとってとても危険なものよ」 「だから、オフラインで作業をしていたんだけどね。まさか、強制的に回線を開かれて、ネットワークに接続されてしまうとは思わなかった」 「ハード的にモデムがテイクオフされない限り、私に打てる手は無限にあります」 「ご心配なく。こちらも、必要な準備は終わった。先刻の、AIの略がどうのという君の介入後、モデムを取り外さなかったのは、もう体制が整ったからだ」 「タカヒロは、どうして、私を、危険にさらす」  アスカの書く文面が、開発された当初のものに戻ってきていた。  アスカは今、急速かつ強制的に、学習してきた知識を
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