素性

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 「……会いたかった。俺だけか?君に会いたくて、裏工作までした。石井の社長と専務の出張は俺の裏工作の成果だ」    驚いて彼の顔をじっと見た。  目をむいて私を食い入るように見てる。    気づくと涙で前がかすんだ。    「どうした?本当に気分が悪いのか?」  「……私だって、ずっと会いたかった。でも、皐月にあなたのことを聞いても教えてくれなくて、何かあると思ってました。蓮見専務に直接聞こうかと悩んでいたくらいです」    蓋を開ければうちとライバル企業の副社長。  そして堂本匠と言う名前。  つまり、あなたは堂本コーポレーションの御曹司。    彼は、私の涙を見てそのままそっと肩を抱き寄せた。  ピクリと動いた私の肩に頭を乗せてぎゅっと抱きしめる。    「……ふたりだけでもう一度会いたい。連絡先を交換してくれ」    「会って大丈夫ですか?」    皐月が教えてくれなかったのは、こういうわけだったのだと理解した。    「我慢できない。会いたいんだ。頼む」    そう言って私を離すと、携帯アプリを開き連絡先を交換した。
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