素性

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 ひたすらパソコンを見ながら仕事中。    私は秘書室に戻り、自分の机で仕事をかたづけていると、専務秘書から電話が入る。  「はい、午前中いっぱい弘取締役はお席でお仕事の予定ですので……」  「では、隆専務が今からそちらに行きますので、伝えておいて下さい」    「わかりました」    電話を切ると、取締役室をノックして入る。  画面から目を離さず、私の気配に「なに?」と聞いてくる。    「……隆専務がこれからこちらにいらっしゃるそうです」    「はあ?忙しいのに。あと10分待ってって言っといて」  「弘、俺だって忙しい。この話が優先だから来たんだろうが」  私の後ろから、背の高い取締役に目元が似ている男性が入ってきた。  「兄さん。勘弁して。この書類だけだから、お願いだ。座ってて」    「しょうがない奴だな」  「専務、何を飲まれますか?今日は美味しい葛きりがあるので、お煎茶と一緒にいかがですか?」    「……古川君。君、ホント気が利くねえ。弘にはもったいない。ウチの方へ来ない?」    「兄さん!」    「おー恐ろしい。うん、とりあえずオススメをいただこうかな」
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