裏の顔

5/9
前へ
/226ページ
次へ
 私はまだ何も始まっていない。     考えないようにしよう。  頭を振って仕事に入る。  集中していて、昼になったことも忘れていた。  昼休み。  皐月は石井兄弟と原田取締役、蓮見専務と一緒に食事へ行くらしい。    私だったら地獄。可哀想に……。  まあ、直也さんが溺愛しているから守ってくれそうだけど。  久しぶりに上司が外出しているし、のんびりと社食へ行く。  すると、せっかくなのに嫌な人に肩を叩かれた。    「遙、久しぶりだな」  春樹……。よくこんなところで話しかけられるよね?  私が振られたことになっているというのは本当のようね。    「……そういう貴方は元気そうね」    焼き肉定食を持って、コーラを乗せている。好みは変わってない。    「お前も相変わらず、月見うどん好きだなあ。一緒に食わないか」    受け答えも相変わらず。  こんなに空気感変わらないのに……不思議なものね、ドキドキしなくなった。  外のデッキのほうのテーブルへ。  今日は少し寒いので外には人はほとんどいない。  席に座ると黙々とお互い食べる。これも通常運転。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1935人が本棚に入れています
本棚に追加