再会

6/10
前へ
/226ページ
次へ
 「そう。たくさんの従業員を預かってからは失敗できない。従業員のいない会社を作って経営のまねごとをして難しさを知るんだ」    はー、匠さんと私って世界が違う。  春樹のいうとおり、雲の上の殿上人だね。    「世界が違うとか思ってるだろ?違わないぞ。弘君の秘書やってるだろ。同じ舞台にいるんだぞ」    そうだけど、そうだけど……違うでしょ。  少なくとも私は親もサラリーマン。  「遙。君が気になって仕方ない。一目惚れだったのかも知れない。女性とこんなに趣味が合って、話していて時間を忘れるほど楽しかったことなんて今までなかったんだ。会いたくてしょうがないんだ。つまり……君と付き合いたいんだ」    食事が一段落したとき、意を決したように私を真っ直ぐ見て話した。    「私もこの間言ったとおり、匠さんが気になって仕方なかった。匠さんのことを聞くと皐月は知らないふりをしたの。直也さんと付き合っているのに……。何かあると直感した。まさか、堂本コーポレーションの御曹司だったとは思いも寄りませんでした。でも、私も匠さんを諦められない」    そう言うと、彼は私の腕を引いて、胸の中に入れた。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1908人が本棚に入れています
本棚に追加