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「好きだ。遙」
「私も好きです。匠さん」
ふたりでにっこりと笑い合い、おでこをつける。
ゆっくり重なって、優しい口づけが落ちてきた。
「ダメだ。これ以上やると止まらなくなる。今度は休日にデートしよう」
嬉しい。
「可愛い顔するなよ。どうしたらいいんだ」
彼は顔を上に向けてはーっと息を吐いた。
「今日はここまでだな。明日もあるし。俺も明日からパリへ出張なんだ」
「そうですか。忙しいんですね」
「遙。ひとつ言っておく。石井兄弟には気をつけろ。兄の隆は俺にライバル意識がある。君のことを気づかれると君にちょっかいを出す可能性がある。弘君は君をずいぶん気に入っているようだ。それらしいことはなかったか?」
「……今のところはありません。ですが」
「なんだ?」
「実は……お付き合いをしていた社内の人から、付き合っていた当時、取締役に私のことでしょっちゅう声をかけられて牽制されていたと聞かされたんです」
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