●3:ドラマティック・ドゥーム

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「…… ハッ!」  力二は目を覚ました。カンダのパンチでカニロボが大破し、衝撃で気を失っていたのだ。  ここはどこだ。男は上体を起こした。見知らぬ砂浜。波打ち際。夕焼けの空。ふと自分の右手を見る。確かカンダにぶっ壊されたそこは――元のカニのような鋏なのだが、ふわふわのぬいぐるみになっていた。 「ウワアアアアアアアアふわふわになってるーーーーーッ!」 「あ、起きた」  斜め上から声がしたので、バッと振り返れば、砂浜にあぐらで座っている巨大な白いロボットが。さっき、自慢のカニロボをぶっ潰したアイツだ。 「かッ カンダてめえええええ!」 「大人しくした方が身の為だぜ。さもないと全身をふわふわのぬいぐるみに改造すっからな」 「ふぐううう……」  相手は巨大ロボット、抵抗しても無駄だろうと、力二は悔し気に後ずさる。そしてふと、カンダの膝の上にラジエラが座っているのを見つけた。彼女は潮風に髪をかき上げ、男を見下ろしている。 「ここは私の島。あなたたちが血眼になって襲ってくるところ。ところで血眼って血ナマコと言い間違えることない?」 「いや何……え?」 「マタ……カンダがいろいろ聞きたいことがあるからって、連れ帰らせてもらった。危害を加えるつもりはない。でも暴れたらぬいぐるみにするからね。『私』の技術があれば30秒であなたを全身ふわふわのカワイコチャンにできることを忘れないで」 「うっ……」  力二が言いよどむ。ので、ここぞとカンダは彼をビシッと指さした。 「おい! ラジエラにケガさせたこと謝れよ! 転んで擦りむいちゃったんだぞ!」  ラジエラの腕の傷には医療ポリマーがスプレーしてあり、傷は見えなくなっている。 「あれはおまえがその女を放り投げたからだろ!」 「そうしなくちゃいけない理由を作ったのはアンタだろが!」 「つーか敬語で喋れ敬語で! 俺は幹部だぞ! 年上だぞ! 敬え!」 「俺のこと殺そうとした奴に敬語なんか喋れっかバ~カ!」 「ギギギギギギギギギギ」 「ていうか俺にも謝れ俺にも! 殺そうとしやがって! 脳味噌以外ダメになっちゃっただろうが!」 「ふんっ! 俺はボスからの命令に従ったまでだ! そもそもおまえがサロナに手ぇ出して足抜けしようとしなけりゃよかったんだよ! ぜえんぶ自業自得じゃねえかバ~カ!」 「む゜ぎ~~~~~~~!」  今にも取っ組み合いを始めそうな男共に、ラジエラは溜息を吐いた。 「ふたりとも喧嘩しない。相手のことバカって言わない」 「「だってコイツが!!」」 「はいはい」  ヒートアップした二人をなだめるように流して、ラジエラは言葉を続ける。 「私はカニくんに謝って欲しいとは思ってない。傷は明日には治ってるし、自分の立場は理解してるし」 「カニじゃない、力二だ……」 「カニじゃん。それと……あなた、『しくじった』でしょ。失敗したら殺されるって言ってたよね。ここにいた方が安全だってことは分かる? ここに居続ける為にはどうしたらいいかも分かる?」 「ぐぐう……」 「まあ媚びろとか屈服しろとまでは言わないけど。せめて喧嘩はしないこと。口喧嘩も含めてね。約束できる?」 「くそ……わかったよ、わかりましたよ」  力二は溜息を吐いてそっぽを向いた。  見下ろしているカンダは――内心、力二から散々されてきたパワハラモラハラを水に流した訳ではないが、争うなとラジエラが言うのならそれに従うつもりだ。それに、この手で力二をぶん殴れて勝利して多少は気が晴れたところもある。ならばこれ以上、過去のことでとやかく言うまい。 「それで、力二、おまえに聞きたいことがあるんだが――」
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