●3:ドラマティック・ドゥーム

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 都市は騒然としていた。  突如として始まった、都市での弩級人型クレーン同士の決闘。勝った方のロボットはすぐさま空に飛んでどこかに行ってしまった。負けた方のロボットは機密保持の為なのか爆発炎上。そんなこんなであっちこっちビルが道路が薙ぎ倒されぶっ壊され……奇跡的に死者はゼロだが……もうてんやわんやである。  しかも決闘したロボの片方は例の『博士』のロボットときた。よもや博士がまた世界を滅ぼさんとしているのか、人類への宣戦布告なのか、ていうか博士のロボと戦ったあのカニロボはなんなんだ、責任は誰にあるのか、そもそもなぜこんなことが起きたのか、なんやかんや……。  更に、博士の記憶を引き継ぐ『娘』を捉えた世界初の映像が世界中に拡散される。美しいその姿は反響を呼んだ。下卑なゴシップの目が向いた。謎の美女現る。センセーショナル。  しばらく世界は賑やかなことだろう。  ――そんな情報に、吸っていた葉巻を握り潰す男が一人。 「力二……それにカンダ、よくもやってくれたな……!」  複数のモニターで情報を眺めていたその男は、ずっとイライラした様子で忙しげに方々へなにか連絡を取っているようだ。  その背中を見つめるのは、ぞっとするほど美しい女。褐色の肌に銀のドレス、瞬きの度に色が変わる不思議な瞳。ソファにしどけなくもたれた彼女は、ゆっくりと瞬きをしながら、『ボス』の背中を見つめていた――。
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