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――客が来る。
その気配を運んできたのは、開いた窓からふわりと吹き込む潮風だった。
ホークは寝そべっていたソファの上で、薄く目を開けた。とろとろと、半分眠っていた。
ここ――海岸から少し上ったところに建つ、ログハウス風の小さな家――に、以前はひっきりなしに人が訪れた。人の出入りが途絶えて、ずいぶん経つ。
ホークは目をこすって立ち上がり、キッチンへ向かった。戸棚から背の高いタンブラーを手に取り、冷蔵庫の扉と相談する。
アイスコーヒー? アールグレイのアイスティー? ジンジャーエール? それともコーディアルシロップのソーダ割?
久しぶりの客だ。彼――彼女――のために、何を作って待つべきか。
今日はやけに蒸し暑い。気温はぐんぐん上がり続けている。
――決めた。
ホークは軽く口の端を上げ、白いリネンのシャツの袖をまくった。今日は――レモネードだ。すっきりとした酸味と軽い甘さ、そしてほろ苦さ。きっと今にぴったりだ。作り方だって知っている。
タンブラーに小さな氷を三つ。カランカラン、と涼しげな音が鳴る。
作り置きのハチミツ入りレモンシロップを大さじ二杯。
ミネラルウォーターを八分目まで注ぐ。
凍らせておいたレモンの薄切りを浮かべ、その上にちょこんとミントの葉を乗せる。
完成。
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