問題

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問題

 どうしてうまく走れないんだろう。まだ足が治っていないとは考えにくかった。もう痛まないからだ。知らず知らずのうちにかばっているのかもしれない。もっとストレッチをして緊張を解した方がいいのだろうか。怪我後の復帰について、このときの拓也の知識はゼロだ。  リレーのことばかりを考えながら午後の授業を受けていたら、あっという間にホームルームが終わっていた。  「さようなら」の声が教室に響くと、机の前に舞香がやって来た。真剣な顔をしている。 「拓也、リレーのことだけど」    嫌な予感を抱きながらも、なんでもないふうを装う。「うん、何?」 「調子出ないのなら補欠の七瀬と代わってもらったら」    小学生最後のリレーだから勝ちたい。それは分かる。でもバトンがうまく渡せないのは、舞香にも半分責任があるはずじゃないか。 「うまくいかないのは、全部おれのせいだって言うのかよ」 「誰もそんなこと言ってないでしょ」 「なになに、どうしたの」  おしゃべり好きの星原こずえが興味津々で寄ってくる。舞香が硬い表情で答えた。 「リレーの話だよ」 「え、リレーがどうかしたの」 「練習でうまくいってなくて、どうしたらいいかなって、思って」 「えー、それって加藤の足の怪我のせいじゃないの」  疑いの目で見てくる星原に、拓也ははっきりと言い返した。 「足はもう治ってるって」
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