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その声が大きかったのか、側を通りがかったクラスメートたちが「どうした」と言わんばかりに集まってくる。
「リレーで揉めてるんだって」
「かとうたち、ケンカしたの?」
「練習で惨敗なんだって」
あちこちから色々な声が聞こえてくると、拓也は大声を上げた。
「違うから!」
それでも次第に「加藤の足のせいだ」「河東が調子に乗ってるんだ」などと、女子は舞香、男子は拓也の味方をする言葉が聞こえだす。
こんな騒ぎはうんざりだ。拓也はランドセルを掴むと、さっさと机を離れた。廊下に出ると、後ろから舞香が追ってきた。
「待ってよ、まだ話しは終わってないんだから」
「話になんねーよ」
ぶっきらぼうに言ったのを怒っているととらえたのか、なだめるような声が返ってくる。
「拓也、いつもの拓也じゃないじゃない。無理してるんじゃないかと思ったんだよ」
「無理なんかしてない。交代する理由なんてない、それだけだ」
舞香の顔も見ずに階段を駆け下りた。幼なじみの声はもう聞こえなかった。
(おれ、何ムキになってんだろ。たかが運動会のリレーじゃないか)
釈然としない気持ちはいつまで経っても消えなかった。
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