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夕暮れ時の河原は、伸びた雑草が風で揺れていた。犬の散歩や帰宅する学生が歩道を通り過ぎていく。
拓也はコンビニで買った漫画とスナック菓子を片手に歩いていた。いつもなら早く漫画を読みたくて早足で家路に向かうのに、気力が湧かなくてだらだら歩いていた。すると背後から呼び止める声がした。
「拓也くん」
振り向くと舞香の姉、菜香が片手を振っていた。名門私立中学の、カーキ色のブレザーを着、チェック柄のスカートをはいている。下校途中なのだろう。
「こんちは」
拓也は軽く頭を下げた。河東家へお邪魔する度に会うため、二つ学年が違っていても気軽に話せる。菜香は「おや?」と言いたげな顔つきになった。
「今日はあんまり元気ないね?」
「えっ、そう? いつもと同じだよ」
「あ、分かった。原因は舞香でしょ? リレーのことで何か言われたとか」
「えっ、何で知ってんの?」
拓也が目を丸くするのを見て、菜香は楽しそうにふふふと笑った。
「私には何でもお見通しなの」
「やっぱり、頭のいいひとには分かっちゃうのかぁ」
「そうなのよ、って言いたいところだけど、違うんだよね」
菜香は拓也と並んだ。背の高い舞香と違って、拓也と同じくらいの身長だ。目線が合い自然と歩調も合う。
「リレーのことだって分かったのには、理由があるんだよ」
ゆっくり歩きながら、菜香はここ最近のことを話してくれた。
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