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はぁ、とため息をついて、畳の上に置かれた洗濯物の前で正座をする舞香。足の骨格に影響があると言って、正しい座り方をするのだそう。向かい合って座る菜香は内股座りだ。洗濯物をたたみ始めるのと同時に、菜香は先ほど聞いた話しを持ち出した。
「そう言えば舞香、またリレーの選手に選ばれたんだって?」
「うん」
「すっっごい。六年間連続だよね」
「まあね」
「ホントすごいよ。私は運動全然だめだからさ、舞香の運動神経の良さは本気で尊敬しちゃう」
まんざらでもなさそうな顔をした後、舞香はすぐに謙遜を口にし出した。
「でも、お姉ちゃんは勉強ができるから。その方が将来役に立つし、すごいじゃない」
「勉強なんて、得意なことって言えないよ。私はたまたま机の前にかじりついているのが合っていたってだけだもん」
「でもいっぱい褒められてるじゃない」
「褒められるのは嬉しいけど、それは一瞬だけのことですぐに消えちゃう。出来なかったことが出来るようになったときの方が、自分の中に残るし、何倍も嬉しいよ」
「そうかなぁ……」
「そうだよ。舞香は運動好きでしょ。特に走るのが。もっと上を目指せば、褒められなくても嬉しいことがいっぱい増えるよ」
舞香の表情が明るくなる。何かいいことを思いついたようだ。
「ねえお姉ちゃん、明日から朝起きたらあたしを起こして」
「えっ? いいけど、私朝早いよ?」
「それがいいの。前にさ、朝は集中できるんだって言っていたじゃない? だからだよ」
「えっ、舞香も朝に勉強するの?」
「まさか。今言ってくれたじゃない、もっと上を目指せって。だからそうする」
先ほどまでのふてくされた顔はどこへやら、舞香は嬉しそうに微笑んだ。
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