舞香の頑張り

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 翌日、菜香は自分が起きる朝の六時に舞香を起こした。弾けるように起き、着替えるとすぐに外へ飛び出していく。気になった菜香はこっそり後をつけた。  日は昇っていて辺りは明るく、空気は澄んでいる。 「朝早いのって、気持ちいい」    独り言を口にしながら、軽い足取りで家から歩いて五分ほどの川沿いに来た。土手と平行して伸びる歩道には通勤の大人や犬の散歩をする人、制服姿の学生などが通り過ぎていく。   「よおし、頑張るぞぉ」    大きく伸びをして、ヘアゴムで長い髪を後ろに結わえると、舞香は準備運動をし始めた。  菜香は何をするのかもう分かった。まっすぐ続いている土手は短距離の練習にもってこいの場所だ。早朝は小学生もまだ通らないから、こっそり練習するのにもいい。  そして始まるスタートダッシュ。  舞香の足が速いのは運動神経の良さだけではない。いつも家でストレッチや筋トレをして、体作りをしているのを菜香は知っている。  バトンを受け取ったらすぐに全力で駆け出せるようにするためだろう、右手を後方へ出して進んだ後、前のめりになって地面を蹴り上げる。五、六歩進んだところで止まる。その繰り返しだ。 「絶対、一位になるんだから」    白いゴールテープを突っ切っている姿が浮かんでいたのか、舞香の目は生き生きと輝いていた。
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