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全員が走り終えると、タイムの一覧表を見ながら先生が言った。
「運動会のリレーの選手、一組は河東さんと加藤くんだな」
クラスで一番速い男女が選ばれるのは毎年変わらない。自分が指名されることは知っていたと言わんばかりに、舞香は得意そうな顔を拓也に向けてくる。
「今年も頑張ろうね、拓也」
今年で小学生は最後であり、運動会は好きな行事でもある。絶対にいい思い出にしたい。あごを上げて自信たっぷりに返す。
「もちろんだ」
気合は十分であったものの、その日の拓也は選出されて嬉しい一日、では終わらなかった。
帰りの時間、友達とふざけながら校舎の階段を降りていたら、右足を痛めてしまったのだ。
友達の肩を借りて保健室へ。応急処置をしてもらい、迎えを待つことになった。椅子に座ったままぼうっとしていたら、オレンジ色に照らされた校庭からにぎやかな声が聞こえてきた。
「やったー、ゴール!」
外からの声につられて窓枠に身を乗り出す。肘をついて「ゴール」の正体を探した。
放課後遊びに来た男子たちがサッカーをして遊んでいる。知らない顔ぶれだ。背が大きいから五年生だろうか。笑いながらボールを追いかける姿からは今を楽しんでいることだけが伝わってくる。
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