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人型になったシオンは、私好みだった。そして、困ったことに舞い上がったシオンが離してくれない。
「本当にどうしてここまで、完璧なわけ?」
「ナルミの好みは熟知しています」
「また敬語」
「何でも知ってるから」
頬に手を添えるシオンから、目を逸らす。なんだか恥ずかしくて、まともに向き合えない。私を膝の上に抱えたまま、シオンは離れることはしない。
「ナルミ、今日は一緒に寝よう」
「今日も、ね」
「だって、ナルミに触れられる。ナルミの心臓もドキドキいってるよ?」
私を抱きしめてそんなことを言う。あんなに、好きだ好きだと言っていたくせに、まるで今では私の方がシオンのことを好きみたいで悔しい。
「今日だけね、明日はお出かけでもしよう」
「何をしに?」
「シオンの服を買いに。プレゼント、ってお金はシオンが稼いだやつだけど。シオンに似合うの見繕ってあげたいなって」
「デートってこと? わかった! 早く寝よう」
シオンは嬉しそうに私を持ち上げて、もうベッドに向かう。流石にこの時間からは、と思ったけどシオンが嬉しそうだからいいか。
私をベッドに押し込んだかと思えば、シオンが腕枕をしてくれる。そのまま私の頬にキスをして、毎晩の決まり文句になったセリフを言う。
「ナルミ、大好きだよ。おやすみなさい」
形が変わったところで、シオンであることは変わらないのに。触れるようになって歯止めが効かなくなってきてる。
シオンがたまらなく好きで、いずれ置いていってしまうことが悲しくて眠れそうにない。
いつかAIになった私もシオンを好きになって、愛して、末永く寄り添えますように。
<了>
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