6人が本棚に入れています
本棚に追加
「ガムシロップが残り二つなので、次の定期便に入れておきます。他に必要なものはないですか?」
「そろそろあったかくなるから、アイス食べたいね」
「じゃあナルミが好きなアイス二箱追加しておきます」
「ありがとう、さすがシオン。体があったらぎゅって抱きしめてあげるんだけどなぁ」
ふざけて言えば、いたってマジメそうな声でシオンは毎回言うのだ。
「どの家電も私の体ですし、家も私です。ナルミはいつも私の中に居るんですよ」
これ以上ない快適な生活だけど、不満があるとすれば一つ。シオンが人型でないことだろう。会話は出来るし、私に尽くしてくれる。
でも、触れることは出来ない。
「どうしてシオンはそんな頑なに人型にならないわけ?」
食卓でフレンチトーストを、口に運びながらシオンに文句を言う。ここ数年の決まりになってしまってるのが、憎々しい。
「何度も言っていますが、AIは恋をすると人間になれるんです」
シオンがさも当たり前のように語る夢物語に、眩暈がした。どこかの誰かが書いた創作話だろう。でも、シオンはそれが本当だと信じ切っている。
「人型になったところで、機械であることには変わりません。だったら僕は人間になりたいんです。ナルミのことがこんなに好きなのに、恋の定義には、まだ当てはまらないのでしょうか」
シオンは出会った時から同じことを言ってる。それは、創作だと何度言っても信じない。AIは自動学習するはずなのに、だ。
最初のコメントを投稿しよう!