恋をすると、人間になれるらしい

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「ガムシロップが残り二つなので、次の定期便に入れておきます。他に必要なものはないですか?」 「そろそろあったかくなるから、アイス食べたいね」 「じゃあナルミが好きなアイス二箱追加しておきます」 「ありがとう、さすがシオン。体があったらぎゅって抱きしめてあげるんだけどなぁ」  ふざけて言えば、いたってマジメそうな声でシオンは毎回言うのだ。 「どの家電も私の体ですし、家も私です。ナルミはいつも私の中に居るんですよ」  これ以上ない快適な生活だけど、不満があるとすれば一つ。シオンが人型でないことだろう。会話は出来るし、私に尽くしてくれる。  でも、触れることは出来ない。 「どうしてシオンはそんな頑なに人型にならないわけ?」  食卓でフレンチトーストを、口に運びながらシオンに文句を言う。ここ数年の決まりになってしまってるのが、憎々しい。 「何度も言っていますが、AIは恋をすると人間になれるんです」  シオンがさも当たり前のように語る夢物語に、眩暈がした。どこかの誰かが書いた創作話だろう。でも、シオンはそれが本当だと信じ切っている。 「人型になったところで、機械であることには変わりません。だったら僕は人間になりたいんです。ナルミのことがこんなに好きなのに、恋の定義には、まだ当てはまらないのでしょうか」  シオンは出会った時から同じことを言ってる。それは、創作だと何度言っても信じない。AIは自動学習するはずなのに、だ。
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