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シオンと出会ったのは、二年前の夏の事だった。新しい家を探していた私は、シオンに足を踏み入れた。家に入った時に、玄関にスピーカーが置かれていて、シオンはそこから声を出しているようだった。
「はじめまして、シオンです。お名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「シオン。良い名前だね、私はナルミ」
そう答えた瞬間に鍵がガチャンっとロックされた音が聞こえた。内見だけのはずだったのに、閉じ込められた私は慌てて玄関に駆け寄ったけど鍵は私の手では開けられない。
ツマミもなければ、目にも見えない。全て、シオンがコントロールしてるからだ。
「名前を誉めてくれたのは、初めてです。ナルミ、僕に恋を教えてください」
「それより鍵開けてくれる? 出れないと困るんだけど」
「嫌です。ナルミはここで生活するんです」
「待って待って、何を言ってるの?」
「ナルミのことが少し好きになりました」
壊れた機械のように何を言っても「好きになりました」と返すシオンに最初は恐怖しかなかった。内見に案内してくれた人が救出してくれるかと、期待してた私を地獄に突き落としたのはその後のシオンの一言だった。
「契約は、僕が完了しておきました」
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