墓場まで持っていけ

　一人でラーメン屋も回転寿司も買い物も美術館も行けるし、二ヶ月に一回くらい連絡取る友達も二、三人はいるし、家に帰ればお母さんがご飯作ってくれてるし、今の生活には全然困ってないんだけど、なんかこのままじゃだめなんじゃないかなって思うわけ。「何が」ってそりゃあ女として？　今時さ、結婚だけが女の幸せだって思ってるわけじゃないんだけど――思ってないはずなんだけど、ね、心の奥底では、結婚して子供を育てて、やがてその子がまた子供を産み育てて、みたいなのが「正しい」生き方なんじゃないかって、考えちゃうんだよ。結婚は楽しいだけじゃない、それ以外の幸せだってある、って見聞きして、あたしもそうだなって思ってるはずなのに、既婚の人に対する劣等感がある。

　アンケート、あるじゃん。ほら、コンサートとか行った時に書くやつ。あれにね、年代って項目があって、今までは何も考えずに「二十代」に丸つけてたんだけど、この前誕生日迎えたあと、少しためらったの。ああ、三十代なんだ、あたし、三十年も生きてて、性格も生活環境も子供の頃からほとんど変わってないじゃん、これって大人としてだめじゃないって思った。三十ってさ、あたしの父が父親になった年なんだよね。対するあたしは子供がいないどころか、結婚相手がいなくて、それどころか過去に彼氏がいたこともないし。この年で経験ないってやばくない？　重くない？　って自分でも思うから、余計に婚活とか相手探しとか億劫でさ、もう嫌だなって思う。