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下駄箱まで来ると、クラス一の秀才の由香ちゃんがいた。
「由香ちゃん!」
「どうしたの?そんなに慌てて」
「私、校庭十周になっちゃった…!」
「えええええ、やっちゃったんだ」
「しかも私だけだって」
「ああまあ、そうでしょうね」
「えっ?そんな…。そうだよね。私が悪いんだ。しょうがないかな。でも先生はなんで分かったんだろう」
「美紀ちゃん知らなかったの?」
「何を」
「あの本、どこにも売ってないんだよ」
「どういうこと?」
「この学校の初代校長が生徒のために書いた本で、卒業生に贈られるの。私たちももうすぐもらうよ」
「じゃあ…AIはその本を…」
「読んだことないし存在も知らないだろうね」
AIも知らないことを美紀以外のみんなが知っていた。三年前に他校から赴任した筋肉先生すら。
「美紀ちゃんのお母さんも卒業生だから家にあるんじゃないかな。捨てちゃっていなければだけど」
「私は、お母さんに聞けば良かったんだね。感想文どうしたらいいのって。AIじゃなくって、お母さんに」
それにしてもあいつは何の本の感想を書いてくれたんだ。
感想文からするとドキドキハラハラの冒険もののようだったが、由香ちゃんによると初代校長が書いたのはこの町のほのぼの人情ものだ。
私の代わりに校庭を十周させてやりたいがどうせあいつには出来ないし
反省の証に校庭は自分で走ろう。
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