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誰も居なくなった部屋の天井を見上げ、
深く息を吐いた
エイジは世界にも名前が知れたアーティストだ。
音楽を作り出す事は好きだ。
自分にはそれしか出来ないだろうとも思う。
初めは自分の作った音楽をアップしていたのが、だんだん気にいってくれる人が増え
メジャーデビューしてからは一気に有名となり、最近はほとんどの楽曲が、ドラマやCM、アニメ等のタイアップだ。
もちろん、自分で納得し、引き受けた以上は真剣に取り組んでいるし、まだ無名だった頃に憧れた人や、今、凄いと思う人達と会えたり、話し合えたりする事もある。
そんな毎日は刺激的で楽しいと思えてはいる。
でも、何だろう。
時々、自分の立っているこの場所は何処なんだろう?と、考える。
この気持ちが、不安なのか、焦りなのか、苛立ちなのか、エイジ本人にもわからない。
しばらく、そのままの態勢で
また、深く息を吐く。
スマホを操作し、配信されている
何年か前のツアーライブをタップしてみた。
たくさんの盛り上る歓声の中で歌う自分は間違いなく高揚した時間の中で良い表情をしてると思う。
そんな自分を真剣に見ていた。
ふと、コメント欄が目に付いた。
昨日残されたものだ。
「ライブなのに歌声がクリアに耳に届く・・・感動。
人生の目標が出来たかも。
ライブ、行きたい」
そうか、自分の居る場所は、誰かの人生の目標なのか。
ふうっと、息を吐く。
そして、テーブルに残されていた、
新しいドラマの企画書を手に取り、
最初から読み始めた。
fin
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