ルーシアと人工知能

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私の名前はルーシア。 この宇宙ステーションでシステムエンジニアをしている。 総員退避の警報は、コンピュータの不具合による誤報なのだろうか。 私は相棒のロボット「シスタン」と共に、メインコンピュータの点検を行う。 「シスタン、総員退避命令出したのは誰? キャプテン?」 「キャプテン カラデハ アリマセン。ボナパルト カラノ 指令デス」 「じゃあ、ボナパルトに問い合わせて!」 「ハイハイ、ショウショウ オマチヲ……」 シスタンは呑気なものだ。 それにしてもボナパルトめ、やってくれるわね…… 「ダメデス。ボナパルトニ アクセス デキマセン」 「どういうこと? あなたには管理者権限を与えているんだから、ボナパルトにアクセスできるはずでしょ?」 「ボクノ アカウントガ ブロック サレテ イマス。キット ボクガ イケメンダカラ ボナパルトガ 嫉妬シテ……」 「そんなわけ、ないでしょ!」 ますます、イライラしてしまう。 ちなみに、「ボナパルト」というのは、この宇宙ステーションのメインコンピュータの愛称だ。 自動進化型のAIを搭載しており、この宇宙ステーション内のほぼすべてのシステムを制御している。 私のような人間のエンジニアだけではボナパルトの制御が難しいため、助手のロボットと一緒にボナパルトの管理をしている。 で、さっきから空気を読まない発言をしているこの助手ロボットの名前は「シスタン」。 私が作った、プログラミング支援ロボットだ。 「アシスタント」から中の文字を抜き出して、「シスタン」と名付けた。 宇宙ステーションでの息が詰まるような日常が、少しでも楽しくなるようにと思って、シスタンに搭載したAIは、ちょっとおふざけな発言をする設定にしてみたのだが、それが間違いだった…… こんな緊急事態にも間の抜けた会話をしてくるとは、あまりに空気が読めなさすぎる……
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