7人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「皆さん、まずはマナとはなにかから学んでいきましょうか。マナは、自然に生えている植物や、空気などに含まれる魔力の素のようなものです。」
授業が始まり、先生の話が始まる。
魔法、どんな感じなんでしょう!
僕もかっこよく魔法を放ったりしてみたいものです…
「魔物や、ヒトはそのマナを吸収し、自身の魔力へと変化させて魔法を放ちます。そのため、天然のお肉や野菜などをたくさん摂ると、より効率よく魔力を回復することが出来ます。また、空気中のマナは少し魔力への変換が難しくなっているため、眠ると回復が早まります。」
まずは使い方などからではなく、その魔力の基本について学ぶみたい。
時々本で出てきた話は、架空ではなく本当のことを書いているものもあったのですね。
異世界の話かと勘違いしておりました…
「それでは問題です。体中の魔力を失うと魔物はどうなってしまうでしょうか。」
いきなり投げかけられた問いに、みんなが意識を向ける。
教室がシン…と静まる。
んー、魔物、魔物…あったことも見たこともないので、難しいですね…
「…はい。」
静まり返った教室に、一人の女の子の高い声が響く。
「リリカさん。どうぞ。」
「意識を失って倒れます。その後、回復してもとに戻ります。」
再び教室に短い沈黙が訪れ、先生が口を開く。
「んー、おしい!魔物は、その体の殆どが魔素で構築されているため、そのまま死に至ります。」
驚いてみんなが息を呑む。
そっかぁ…ちょっと、かわいそうかもしれません。
「反対にヒトは、リリカさんの言ったとおり魔力を失うと意識を失います。魔法を使えないヒトも、同じことがいえます。どうして魔法が使えないのに魔力を失うと倒れていまうのかというと、少し難しいですが…使えないヒトも、魔力を魔法の式に変換することが出来ないだけですので、ほとんど皆さんと変わりません。」
普通のヒトと僕たちのような魔法が使える種族は全く異なる仕組みになっているんだ、と思っていましたが、まさかのほとんど一緒なんですねぇ。
でも、そろそろお話飽きてきちゃいました。魔法が見たい…
「さぁて!皆さんそろそろ飽きてきた感じがしますので、早速魔法の放ち方について学びましょうか。」
先生のその一言で教室に歓声が上がる。
でも、少し不安なんですよね。希少種?と言われているのもありますが…生まれてから一度も衝動的でもなんでも魔法を放ったことがないので…
十歳くらいの頃に一度殺されそうになりましたが、その時も魔法が出そうな感じはしませんでしたし…
「もうすでに魔法が使える人もいるかも知れません。ですが、そのまま使ってしまっては事故に繋がる可能性があるため、この学校に学びに来ています。そのため、必ず指示に従って勝手な行動には走らないこと。それが出来ないと、学校側から魔力遮断の腕輪がつけられてしまいますよ。」
魔力遮断の腕輪!そんなものが存在するのですね!
なんだかわくわくが止まりません。
「まだ出したことのない人へ説明すると…血液を一点へ集めるように意識を集中させてみてください。そのまま息を吹き込むように空気中に飛ばすと、魔法が発動するかと…」
教室から「できた!」「なんか集まってきて変な感じ…」とか、声が聞こえてきます。
ですが僕は…何かが流れるような感覚が一切なく。なんだか、なんていうか、体の中に何かが絡みついているような、詰まっているような…
気持ち悪い感覚がするだけで、何も動かせません。
何かやり方が間違っているのでしょうか?
「…できそう?」
「ん…なんか、体の中に何か詰められているような絡まっているような感じがして一切動く気配がありません。深月くん、やってみてくれないですか?少し見てみたいです!」
僕がそう言うと、深月くんはスッと氷のクリスタルのようなものを作って見せる。
「わー!綺麗です!僕は、全然できる気配がありません…深月くんは、大きな魔法を放てますか?」
「…魔力が強いから学校側から弱い制限食らってるけど、ある程度ならできると思う。」
いいなぁー。一切できそうにありません。
「咲花さん、どうですか?」
「わひゃっ!?」
突然誰かに声をかけられた。
声の主を確認すると、先生でした。
「すみません、驚かせちゃいましたか?そういえば、咲花さんの属性を確認するのを忘れていたのを思い出しましたので…少し様子をうかがいに来ました。属性鑑定の先生にはもう、話は通してありますので、空いている時間にでも先生に声をかけてください。」
「わかりました、ありがとうございます。それで、魔法についてなのですが、かくかくしかじかで…」
「なるほど、何かが絡まっている…もしかしたら、まだ魔力が開放されていないのかもしれません。」
「開放されていない?」
魔力に、開放も何もあるんだ!てっきり、みなさん最初から使えるものだと…
「実は、私達亜種のヒトは母親のお腹から出たときに、自然と体の中の魔力が開放され、魔法が使えるようになります。本当に稀ですが…たまに開放されていないヒトもいるんですよ。それこそ、数百年単位で出てくるくらい稀ですが…」
「そうなんだ…では僕は、まだお母様のお腹から出ていないようなものなのですね…」
その言葉を聞いた深月くんが驚いて僕の方を見る。
あれ、何か変なこと言ったかな?
「うふふっ、いえ、そうではなくって…まぁ、すこし説明が難しいのでそんな感じで覚えとけば大丈夫だと思いますよ。」
「なるほど、わかりました。覚えておきます。」
でも、困りました。このままでは僕はお母様のお腹に戻ってもう一度生まれ直す必要が出てきます…しかしそれではお母様のお体に負担がかかりすぎてしまいますね。
うーん、どうすればいいものか…
「でも、聞いた話ですが、何か条件が当てはまるとなにかの拍子に開放されたりもするみたいですよ。ですが、咲花さんの場合貴族ですので、なにか厄介な呪いをかけられている可能性もあります。それも含めて、鑑定の先生に見てもらいましょうか。」
よかった、まだ希望はあるんですね。
無事開放されればいいのですが…
最初のコメントを投稿しよう!