入学式

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―深月Sid― 「深月くんってさ、いい香りするよね。」 隣に立つ咲花という人が言う。 僕は全くその意味が分からない。 小さい時からずっと、ずっと…言われてきた。 『深月って名前?ださwなんか女みてぇw』 『深月ってなんかきたねぇよな。』 『きもっこっち来んなよ。』 『なんかこの部屋臭くね?あ、深月がいるからかw』 『あんたなんか生まれてこなきゃよかった』 『出ていけ!お前はうちの子じゃない!』 『出来損ないが』 『こんにちは、今日からよろしくね。』 『そんな事もできないんですかぁ?』 『うっさ。ほんと子供ってウザいわね。』 『喚いてれば解決できるとでも?』 沢山の人にウザがられて、嫌われて、殴られて、 そんなある日、チカラは暴走した 『ほんっとお前ってキメェよな。目障りなんだよぉ!!』 眼の前の男に殴りかかられる。 いつものことだ。 『なんか言ったらどうだ?あぁ、こんな痛みじゃ足りねぇって?』 そんな事、言ってないのに 『もっと痛いこと教えてやるよ。腕出せ。』 相手はカッターを取り出す。 『いやっやめてっ』 『あぁ?なんでお前が俺に逆らってんだよ』 男は飛びかかってきた 本能には逆らえなかった 『うがぁあぁああ!』 『え…?』 何が起きているのかわからない。どうしてこうなったのかもわからない。 僕から出た氷の針が男の手足に突き刺さっていた。 『バ、化け物がァァあああ』 そう言って男は逃げていった。 すぐに大人が駆けつけ、殴られた。 『あんた人間じゃないのね。ただの化け物じゃん。』 『殺しちゃってもいいんじゃない?w』 なんで、なんで、 『ご、ごめんなさいごめんなさい』 『あぁ?うっせーよしゃべんじゃねぇ』 そう言って女が殴りかかろうとすると、部屋中が凍りついた。 何が起きたのかわからない。 ただ僕は力が抜けて、 そこからは何も覚えてない。 ただどうしてこの少女は僕なんかに関わろうとするのか? 僕なんかの香りがいいというのか? それがわからないから 素直に受け取れない 相手の好意も なにか企んでいるのかも きっとこの子も他の奴らと一緒だ。 「優しい光だもん!」 「…もし君がいいなら、仲良くなりたいな」 そんな真っ直ぐな笑顔で、 嬉しそうな声で 話しかけないで もう嫌なんだ 裏切られるのも いじめられるのも 疑うことすらも ごめんね 仲良くはなれない
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