新入生歓迎会

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「お腹いっぱい…」 「…もう?」 甘いもの食べて、野菜も食べて、もう何も食べられません… 「深月くんはお腹満たされましたか?」 「…僕ももう大丈夫。」 会場では音楽が流れていて、数人の貴族が手を取り合って踊っている。 「…ねぇ、このあと時間ある?」 「…用事は、特に何も。」 「僕の部屋でお茶はどう?人が多いと落ち着かないの。一緒にお話しましょ。」 「私も歓迎しますよ。」 ちょっと聞きたいことがあるんだ。 かなり失礼になるんですが… 「…別にいいけど。」 そういって少し嬉しそうな顔をする。 あれ、かわ、いいかも… 「じゃぁ、ついてきて!」 「…え、う、うん。」 そう言って歩いていったのもつかの間。 「…ねぇ、零。ここどこ?」 「部屋と真反対の方向ですね。」 「…またやってる」 もー!零、なんで止めてくれなかったんですか? 「…では、私の後ろについてきてくださいね?」 結局零の後ろについていくことになりました。 「…ほんとに方向音痴だったんだ」 「おかしいですね…」 しばらく歩いて… 「着きましたよ。」 「いらっしゃい深月くん。」 ドアを開けると、そこには屋敷と同じようにされた部屋が広がっていた。 「…明るいのに、夜空の中にいるみたい。」 「可愛いでしょう?」 ここの制服も夜空っぽいみためをしているから気に入ってるんですよね。 「お茶の用意できました。メイド用の部屋にいるので、何かあればお声がけください。」 「うん、零ありがとう。」 零は一礼して去っていった。 「…おいしいね。」 「でしょ?…ねぇ、かなり失礼になるんだけど、聞きたいことがあるの。」 細かくはわからないけど、深月くんが不安そうな原因を知りたい。 「…いいよ。何でも聞いてくれて。」 「ありがとう。…深月くんには、親、いるの?」 「…え、」 かなり踏み入ったことになる。 もっと仲良くなってからのほうがいいかと思ったんだけど、早くその不安から開放されてほしい。 「…なんのためにそんなこと聞くの?目的は?」 「君が、ずっと不安そうな瞳をしてるから。それに、名字が無いって言ってたから…違うかったらごめんね。」 「…君が思ってる通り、いないよ。」 「そうだったんだ…ほ、本当にごめんね?」 深月くんはまだ僕に疑いの目を向けている。 「この学園に来て気づいた。僕は全く普通じゃないんだって。」 「…だから何?」 「ううん。なんでも無い。」 「…水晶玉のこととか?」 「それもそうなんだけど…。他の人の周りに光が見えるんだ。柔らかくて、暖かな光とか、黒くて、冷たい光とか。」 「…それで言ってたんだね。」 「そう。それに、黒い光の人に近づくと全身がピリピリするの。しかも、触られたら、焼けそうな熱さや痛みを感じたうえ、気絶しちゃうのです。時々、地面に足が触れても痺れていたいし。 なんか僕、魔法もうまく使えないような、希少種ってやつみたいなんです。」 「…話を戻すけど、どうして僕に親がいないと思ったの?さっき言ってた情報だけでわかるとは思えない。」 「これもさっき気づいたんだけど…しばらく話したりしてたら、その人の過去?とか、大体の性格だとか、わかっちゃうんですよね。」 「…じゃあ、あの駿とか言う人は…」 「入学式始まる時点で、薄々気づいてました。僕、狙われてるなって。それで深月くんもなにか言われるのが嫌で…言おうと思ったんだけど、君はやめてほしそうだったから。」 「…そう、だったんだ。あの女の子、は?」 「あんまり話してないから分からなかったんです。話し方、だとか仕草だとかそんなのを見てわかるみたいなんだ。だから、時間が必要。」 最後の以外は、こちらの結界側に来てから。最後のは生活していくうちに薄々気づいてた。 うちのメイドさんたちは、変態だけど、悪い人たちではない。 なぜこうなるのかなどの理由は、誰にもわからない。 でも、結界内と結界外では空間、というか空気が違うから。 「…僕の、過去の話するね。」
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