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コンコンッ。乾いたノックの音が早朝の静かな廊下に響く。
「零です。凍歌様をお連れしました。」
零がそう言うと、扉は勝手に動き出す。…誰がどうやってこんな重そうな扉動かしてるんだって思ってましたけど、魔法だったんだ。
「いらっしゃい凍歌。おはよう。道中、護衛をつけるから安心して行ってらっしゃい。」
「はい、母上。行ってきます。初めて外に出るので少し緊張しています。」
ふふっと母上は笑うと、手を振ってくれた。扉の外に向かって歩きながらも、僕は手を振り返しました。
…本当に、挨拶だけでしたね。
「寂しいのですか?」
「うん、ちょっと寂しいけど、学校は楽しみです。」
そう答えると、零さんは安心したように息をついた。
外には高級車なるものが用意してあった。黒色のきれいな車だった。
「凍歌様、乗ってくださいませ。」
僕はスカートの裾がめくれないように気をつけながら車に乗り込んだ。
…この車やけに大きいなと思っていたけど、中に部屋があったんですか。
「すごいですね、この車。」
「はい。到着するまでに少し時間がかかるので、お茶でもして待っておいてください。」
そう言って、零は紅茶と茶菓子を差し出してきた。
「ありがとう。いただくね。」
とても美味しい。
「これは零が入れたの?」
「はい、お気に召されたでしょうか?」
そう言って、零は柔らかく微笑みかけてきた。…綺麗だな。見た目だけの僕とは大違いです。
「…一つだけ、魔法がうまく使えるコツを伝授いたしましょう。それは、自分に否定的感情を抱かないことです。」
まるで、僕の心を見透かしたかのように言った。
「どうしてそんな事をいきなり?」
「凍歌様が御自分に対してあまり好意的な感情を抱いていないと感じましたので。凍歌様は十分素敵ですよ。」
零から見ても素敵と思ってもらえるのは、少し嬉しかった。
「えへへ、ありがとう。そういう零もとっても綺麗だよ。」
「…〜!!お褒めに預かり光栄です。」
否定的な感情を抱かない…かぁ。できるかな…?いや、出来るかじゃない、やるんです!
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