椎名くんは変わらない

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「どうした、藤川。シロイルカ見てないじゃん」    不意に椎名くんがこっちを向いた。  私はドキッとして思わず目を逸らした。 「さてはお前、飽きたな?」 「そんなことないよ」 「いいや、その目は完全にもうイルカとかどうでもいいから早く帰ってクソして寝たいって目だったね」  お前の目は節穴だらけだな。  うら若き女子の目を見てそんなふうに思うとは、失礼を通り越してもはや病気だろ。早いところ眼球をえぐり出す手術をした方がいいと思う。 「椎名くんこそ、飽きたんじゃないの? ぶっちゃけ水族館とか、興味ないでしょ? いったい何が目的なのかはっきりしなよ」 「俺の目的?」  椎名くんは図星を指されたような顔つきになった。  心なしか、彼の頬に赤みがさしているような気がする。 「何で私を水族館なんかに……誘ったのよ」  う。  なんか、恥ずかしい。  斜め下を見ちゃう。  もしかして、核心をついた質問をしちゃったんだろうか。  シロイルカは和名で、ロシア語ではベルーガというんだね。  目に入った水槽の説明書きを受験勉強の必須科目ぐらい必死に見ちゃう。  イッカク科シロイルカ属に分類されるクジラ類なんだ。  え? イルカなの? クジラなの? どっち?   「藤川」  改まった声で、椎名くんが私の苗字を呼んだ。 「……俺がここに来たかった本当の理由、知りたい?」
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