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オオメンダコ。
それは深海に住むタコの一種。八本ある腕がスカートのようにふわふわした膜でつながっており、頭についている耳のようなヒレをパタパタさせて泳ぐ姿がとっても可愛い。普通のメンダコは15センチから20センチの手のひらサイズだけど、オオメンダコは超激レアで30センチにもなる大きさ。そのキモ可愛い見た目で「深海のアイドル」とも呼ばれている超人気生物である。
「あああああああ〜〜!! 可愛い可愛い、可愛い〜〜〜!!!」
椎名くんはオオメンダコの水槽に貼り付いて、私には絶対に言わない可愛いを連呼している。
いや、まあ。
いいんですけどね。
たしかに、可愛いわ。うん。ちょっとキモいけど、納得の可愛さと言っても過言じゃないわ。
「ごめんな、藤川。俺ばっかりテンション上がっちゃって。超レアすぎて、日本でも展示してるのはここだけだって聞いてからずっと本物見たかったんだよな。やっと見られて興奮しちゃったよ」
「ううん、いいよ。見たいもの見たらそりゃテンション上がるよね」
高校生男子が水族館に来たがる理由。それは、サメやシャチでもなく、ましてやクラスメイトの女子なんかでもなく、オオメンダコでした。
……って、読めるか、そんな変化球。
椎名くんだけだろ、そんな特殊な奴。
まあ、椎名くんらしいけど。
いつものオチに少しホッとした反面、今日はほんの少しだけ違うパターンもあるんじゃないかと期待してしまった自分にガッカリした。
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