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「私のは参考にならないよ。”世紀の大恋愛だと思ったのに、違った”んだよね」
「えーー?」
カタコトの日本語を喋る店員さんが先に届けてくれたラッシーをぐるぐるとかき混ぜながら環ちゃんは下を向きます。
「大学で出逢って、同じ部に入ってさ。バラ園とかお城とか色んな名所を巡って写真を撮ったんだ。色んな学部から趣味の同じ人が集まって仲のいいグループになった。でも、その中に一際カッコいい王子様が居たの」
「王子様、ですか」
「うん、誰とも打ち解けられて、優しくて気さくな王子様だと思ってた。実際、初めて話しかけてくれたときだって、ハンカチ拾ってくれたんだよ」
運ばれてきたカレーを食べながら私達は王子様だった頃の環ちゃんの元カレの話をしました。
話をまとめると、それまで男の子の友達が殆ど居なかった環ちゃんは、彼のコミュ力とエスコート力に惹かれ、徐々に異性として意識していったということでした。
「私たちのグループはさ、私が法学部、元彼が文学部、他の2人が工学部と医学部だったから、文系で取ってる講義も被ってることが多かったの。共通の話題も多くて、もっともっと話したい、一緒にいたいって思うようになった。今年の夏からだったかな、2人だけで過ごしたいって思うようになったのは」
「実際に2人になったらどうだったんですか?」
「......うまく、いかなかった。アイツは全然王子様でもなんでもなかったんだ。優しくしてくれのだって、全部、まやかしだよ」
環ちゃんは大きめのナンを粉々にちぎってカレーに浮かべます。
「一緒にいるだけなら友達で良かった。踏み込まなければ知らずに済んだ。......友達と恋人の違いってなんなんだろうね。どうして関係性を変えたいなんて思っちゃったんだろう。周りの友達も皆居なくなっちゃったし、損ばっか」
「お友達とも疎遠になってしまったのですね」
「うん......。皆、ね」
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