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ーー Side 緒方 光高
その夜、落ち込んだ里依さんが305号室にやってきた。僕は求められるがままにココアを入れて里依さんをもてなす。
「というわけで、失敗しちゃいました」
「だから何もしないでって言ったのに」
聞くところによると環さんに松野との和解を申し込んで怒らせたらしい。里依さんのこういうところが本当に困る。
前は里依さんのこういうところが苦手だったのだけれど、悪気がなく本人はいたって真面目に事象に取り組んでいるつもりであることを理解している今、無碍にもできない。
「環ちゃんが変なことを言ってて。緒方さんが文学部なら”あのこと”を知ってるんだろう、みたいな」
「......知ってると思うけど、僕は噂とかに詳しくない」
学内の人間関係や派閥の話に興味はない。 松野にも驚かれるが、人の噂話の面白味が僕には全くわからないのだ。
「そうですよね。でも、松野くんと環ちゃんがなんで別れたかとかは知ってるんじゃないですか?」
「......。」
これは松野から聞いて知っている。だが、里依さんにだけは言いたくない。僕の反応から里依さんは何かを察したらしい。
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