第五章 波乱のカルピス

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 僕たちが話題を変えてもどうしようもない空気を払拭できないでいる中、里依さんのスマホが鳴った。途端に里依さんの顔が明るくなる。 「あ、真さんです」 「真?」  普段は口悪く言い争っているように見える里依さんと真は、実は仲がいい。多分、同姓である神倉とよりも真との方が仲が良いことも、僕が真に対して複雑な気持ちを持て余している一つの要因だ。 「真さんも環ちゃんと同じ法学部ですから、何かご存知ないかと思って聞いてみたんですよ」  手早く里依さんがリンクを開くと”学内で昼ドラ発生!? 熱愛カップルの修羅場”と書かれたつぶやきが目に入ってきた。 「これは、SNSで投稿された動画のリンクですね」  細い指が再生ボタンを押すと同時に聞こえてきたのは、女の人の怒鳴り声だ。  “私の身体だけが目的だったの!?”  “信じてたのに!!”  動画ではなけなしのモザイクが掛かっているが、これは確かに環さんと松野だった。怒鳴っているのは環さんで、松野は始終しょげている。 (これは酷い)
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