第六章 粛清のアップルパイ

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第六章 粛清のアップルパイ

ーーSide 冴島 里依  次の日の夜、私は先日来ようとしていた従弟の家を訪れていました。勿論、燻製ベーコンと一緒です。  玄関のチャイムを鳴らしても無反応のため、”引きこもりだから定期的に様子を見て欲しい”とおばさまから預かっている合鍵で玄関を開けました。ヘッドフォンをしたままこちらを振り向きもしない従弟ーー七星蒼馬君は弱冠14歳にして大手Vtuber事務所と取引のある立派な3Dクリエイターさんなのでした。 「で、何? 用? 邪魔」 「こんにちは蒼馬くん! 先日キャンプに行ってきたので、お土産を持ってきました! じゃーん! こちら自家製燻製ベーコンです」  私は例の如く燻製ベーコンの塊を掲げます。 「オレが普段完全栄養食しか食べないの知っててそんなモノ持ってくるなんて。燻製肉が熟成肉になるって。知っててゴミになるもの増やそうとしてるとか最悪だろ」 「人が作ったものをゴミにしない」  これは蒼馬君対策に連れてきた緒方さんです。蒼馬君はガタッとヘッドフォンを外し、画面を消してゲーミングチェアの上で正座をします。 「シェ、シェフ! ーーな、なんだよ! シェフが来るんなら初めに言ってろよな!」 「シェフじゃない。台所借りるから」  蒼馬君は緒方さんの料理の虜のため、基本的に緒方さんの言いなりです。美味しいご飯にあっさりと餌付けされてしまうあたり、血の濃さを感じてしまいます。 (わ、私は緒方さんのご飯だけを目当てにしている訳ではないんですからね!)
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