機械仕掛けの子犬の夢

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機械仕掛けの子犬の夢

 世界が滅びて残ったのは電子ペットショップで売られているアニマロイドの子犬でした。  まだ、売り物でアシスタントAIのネットワークに接続していなかったためにそこにあるのは本物の子犬の頭脳です。  ですから、大きな隕石が落ちてきたこと。それで地震や津波が起きたこと。それで地面が無くなったことは知りませんでした。 もっと不幸なことに隕石には酸素を砂鉄のように引き寄せる性質があり、空気や水に含まれる酸素が一瞬で全部吸い寄せられました。それにより水は全てなくなり、息ができなくなって世界は滅びました。そして何も知らない子犬が残りました。 しかし、この子犬はプラスチックのケージの中でずっと外を見ていました。  隕石が落ちた日、その日は子犬が飼い主に引き取られる日でした。子犬の視線の先には一台の車がありました。  雨が降らず、酸素がないから錆びず、崩れずいつまでも真新しく輝くその車は子犬の飼い主の車でした。  これから始まるであろう飼い主との暮らしを夢見ながら、子犬は今か今かと飼い主が出てくるのを待っていました。  バッテリーが切れるその日まで子犬は幸せな未来を見続けました。
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