01.就業式

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01.就業式

『よくきたな……シャドーよ……』 「ん?ここは?」 真っ白な空間で浮遊感を感じながら、目の前の白髭おやじを見つめる。 『さっそくだ。シャドーよ……シャドー・テンペスト・ドラゴンよ……』 「そうだ、俺はシャドー!そしてここは……そうか、就業式!大切な、職業(ジョブ)を授かる儀式中だ!」 目の前に浮かぶ白髭おやじ、こと神様は言葉を続ける。 『お前の職業(ジョブ)を授けよう……』 そうだ!俺は……シャドー!テンペスト……テンペスト……ドラ……おぃーーー!俺ーーー!五歳の俺ーー!何てことしてくれてんだーー! その時俺は全てを思い出していた。 平凡な農家の息子として生まれた俺、田中次郎は14才で父親(おやじ)のトラクターにはねられ命を落とした。 そしてここからは別の生を受け、いわゆる異世界と呼ばれる世界に転生していた。 そうだ。確かに孤児として育った記憶もある。そして孤児院に入る5才の時、親に捨てられ名前のない俺は……俺は、こともあろうに虐められないように仰々しい名前を名乗った。それが……シャドー・テンペスト・ドラゴン! ほんとマジで俺よー。何してくれちゃってるかなー。なんだよ。影の嵐で竜でした?なんだそれ!なんだそれっ!あーーーーもう何も聞こえなーい。白髭じいさんなんか言ってるけど聞こえなーい『おい!』「ギャーーー!」 聞こえないふりをしていたのが悪かったようで、白髭神野郎の大声に鼓膜がバーストするかと思った。 『早く聞けよお前!後がつっかえてるだろが!』 「は、はあ」 結構怒り心頭だったようで言葉が荒い。 『いいかテンペ。お前の職業(ジョブ)言うからな。一回で聞き取れよ』 「ええはい。ちゃんと聞きますのでちょっと言葉使い戻してもらっても良いでしょうか?」 『ちっ!まあそうじゃな……シャドーよ、お前の職業は(ジョブ)は……ん?中二ぶふっ……う¨う¨ん!中二病、じゃ……』 「おい……今笑っただろ」 『笑うわけなかろう』 「中二病ってなんだよ。わざとか?嫌がらせ?」 『そんな事あるわけないじゃろ!公平公正に毎回えいって気合入れて引くんだからな!』 「『引くんだからな』ってなんだよ!くじ引きか何かかよ!」 『まあそんなもんじゃけどな』 俺はがっくりとうなだれていた。 「じゃあまあいいわ……職業(ジョブ)の説明……」 『へっ?』 白髭じじいがきょとんとしている。 「『へっ?』じゃねーよ!あるだろ、就業時に神から『この職業(ジョブ)はこんなのだー』ってのがあるって、ちゃんと聞いてるんだからな!」 『まあそうじゃの。じゃが必要か?』 「えっそれってない事もあんの?」 『いやそんなことあるわけないじゃろ?』 「じゃあ聞くなよやれよ!」 白髭じじいは手のひらを上にあげて首を左右に振っていた。俺の中の殺意の波動は上限知らずで上がっていく。 『テンペ。お前の固有スキルは闇の言葉(シャドーワード)。説明は……ぶふっ……失礼。その言葉は真理を紡ぎ、その姿は未来を切り開く!そして進むべき道しるべとなれ!じゃと……笑えるの』 「………」 『以上じゃ。さっさと帰れ』 「もっと説明お願いします。たのんます。何それ!わかんねーよ!俺何したらいいの?」 『しょうがないのー。特別じゃぞ。その言葉は真理を紡ぎ、その姿は未来を切り開く!そして進むべき道しるべとなれ!か……なんか人前でかっこいいワードとポーズでやりゃ大抵なんとかなるってスキルらしいの』 「へっ……」 『以上じゃ。さっさと帰れ』 「まてよ!無理だろ!なんなんだよ!」 『うっさいのー!はい、次の方ー』 「ギャーーーーー」 俺はその空間から雷を食らったような痛みと共に元の教会の一室へと戻ってきた。 それが俺の異世界転生ライフの始まりであった。
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