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「グゥが変なことを言うんだ。また故障したのかもしれない」
「どういうことだい?」
俺の話をひと通り聞いたレオは、お腹を抱えて笑った。
「たしかに。名前を呼んでいるように聞こえるね。グゥ、海人のいびきを再生してごらん」
「俺のいびき?」
「ハイ。再生シマス」
その瞬間、
グゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ。グゥウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ。
グゥのいびきと全く同じいびきの音が、部屋中に鳴り響いた。
「お、俺のいびき……?」
「うん。君は、グゥと同じく大きないびきをかく。というか、そもそもグゥは、君のいびきを真似していただけなんだけどね」
俺は目を見開いた。
「俺がいびきを?」
そして、首をぶんぶんと横に振った。
「だとしても、グゥはどうして俺を真似したんだよ?」
俺が開き直って答えると、レオはパソコンを開き、英語や数字の交じる文字列が映し出された画面を俺に向け、真ん中辺りを指さした。
「アンドロイドは、人の言葉や動きをじっくり観察して、真似しながら学習するようにプログラムされている。特にグゥは、『人の真似をする』というプログラムに忠実だったようだね」
レオは、グゥの頭を撫でながら話を続けた。
「例えばグゥはゲームが得意だろう。でも、数学が苦手だろう?」
「そうだけど……」
「それも君の真似なのさ」
「えええ」
あまりの驚きに、俺は尻餅をついた。
「そうだ。折角だから、グゥが得た君のゲームの知識を、僕にも分けて貰おう」
レオはそう言って自分のシャツをまくり上げ、脇腹にあるコンセントの穴のような窪みを指でなぞった。
「実は、僕もグゥと同じアンドロイドなのさ」
そう言いながら、指でなぞっていた脇腹の窪みに、パソコンから繋がっている黒いコードをカチッと差し込んだ。
「僕の夢は、完璧なアンドロイドになること。こうして沢山の知識を習得し続ければ、いつか必ず人を超える完璧な存在になれると思わないかい?」
レオは希望に満ちた顔で、俺のゲームの知識を脇腹から吸い取った。
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