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俺はすぐに背後の窓の方を振り返った。
間違いなく、ここから見えるビルの屋上でライフルを構えている、あの作業着姿のヒットマンが、敵を全員始末してくれた…。
俺が呆然と見ていると、作業着姿の男はライフルを肩にかけて、そそくさとビルの屋上から去っていこうとしていた。
「すまないな!」
俺はありったけの大声を出して、遠くのビルの屋上から消え去ろうとしている作業着姿の男の後姿に声をかけた。
すると男はチラリとこちらを振り向いて、
「ふふ、借りは返したぜ!」
と叫んだ後、小さな、親しみの微笑みを浮かべてから、すぐに跡形もなくその場から消えて去った。
ありがとうな…
難しいことは言わない。
ただそのままで、生きていてくれれば、それでいい。
多くを望まないし、そもそも望めやしない。
俺たちのような生き方をしてれば…
だがまたいつか、
風に吹かれて、
何処かでふらりと出会いたいものだ。
それまで元気でな…
不意に地面を見ると、マットレスの上で綾波優斗と帯広絵梨奈は何とか元気そうにしていてくれた。
どうやら敵のヒットマンは5人だけでもういないようだ。
だが、この後また次の部隊が乗り込んでくるかもしれんので、俺はすぐに部屋を出て、階段を突っ走って降り、外のマットの上にいる優斗と絵梨奈を連れて車に乗せた。
そして地下の部屋のクローゼットの中に隠れている冴木了司も連れてきて車に乗せ、運転席に入るやいなや、すぐにアクセルを思い切り踏んだ。
この修羅場から遠く離れるために、ひたすら全速力で車を飛ばした。
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