55人が本棚に入れています
本棚に追加
116
「じゃあこれからは了司さんと?」
帯広絵梨奈を綾波優斗に会わせた。
それが俺の任務だから。
優斗は傷も癒えて、すでに退院していたので、そろそろ頼まれたことをちゃんとやっておきたいと思った。
優斗がDJをやっていたバーで二人は顔を合わせた。
二人は後ろのテーブル席に座り、俺は背を向けてカウンター席に座って、一人マティーニを飲んでいた。
「じゃあこれからは了司さんと?」
それが絵梨奈の優斗への第一声だった。
「うん。ごめん、これからは今まで隠してきたり、誤魔化してきた自分の本心で生きていきたいんだ」
「そう」
「勿論、君のことが好きだったのは嘘じゃない。そんな嘘なんかつけるほど器用じゃないからね。でも…」
「わかってるわ。よくわかったわ、あなたの気持ちが…」
「ありがとう。ずっと自分は異常なんじゃないかと思って生きてきた。今もまだ隠していて、世間に言う勇気はないけど、でももう何一つ誤魔化したくないんだよ。学生の頃はそのことで悩んで、もう死んでしまおうかと思っていたけど、これからは…まだ大した勇気はないけど、自分の本心に従って生きていきたいんだよ」
「それでいいよ。あなたが幸せなら、それでいいのよ」
「ありがとう…」
最初のコメントを投稿しよう!