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昔、LAにいた頃、帯広絵梨奈そっくりの女と少しだけ暮らした。
所謂、あばずれ女だったが、俺にはいい女だった。
だがその女も、俺から離れていった後、LAの最果てで無残な死に方をしたらしい。
その死に様だけはわざわざ確認したくなかった。
風の噂で伝え聞く話だけでも俺には辛かったからだ。
だが今、目の前にいるそれとそっくりの女が、大きな喪失感を胸に抱えて、もうどうすることも出来ないまま、ただ沈黙している。
結局、あの女にも何もしてやれなかったように、彼女にも、俺は何もしてやることが出来ない…。
何を言っても、どう慰めの言葉をかけたところで、どうすることも出来ないだろう。
幸い、冴木了司を殺そうとする過ちを止めてやれたことだけが、俺がしてやれることだった。
だがそのことで了司を愛する優斗が傷ついてしまった。
彼女は愛する優斗のために狂った凶行を犯したというのに…。
絵梨奈は自ら警察に自首しようとしたが、了司と優斗が止めてくれた。
絵梨奈なりに罪を償うことで、自らに戒めとけじめをつけようとしたのだろうが、絵梨奈に申し訳ない気持ちがある二人がそれを止めた。
絵梨奈とはこれで契約は終わりだ。
彼女を綾波優斗に会わせるという俺の任務はもう完了したし、その後の話もついた。
だが、
余計なお世話だが、俺はこのままこのバーをすぐに立ち去る気にはなれなかった。
何の役にも立たないが、隣に居てやることぐらいは出来る…。
彼女は本当は一人になりたいのかもしれないし、こんなのは余計なおせっかいかもしれない。
だが、俺は柄にもなく、余計なおせっかいを焼きたくて、この場から離れられなかった。
この女まで都会の最果てで死なせるわけにはいかない…
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