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《ロンポダ》──そこは良質な地下水に恵まれた小さな村で農業の他に鍛冶屋が数軒ある。
その鍛冶屋に住む少年テルンは自ら打った剣を荷車に乗せていた。
「父ちゃん、昼飯は作っておいたからな」
テルンが家に向かって言うと父親のガゼムは「ああ、気をつけてな」と大声で答えた。
「ミモ、行こう」
ミモと名付けた仔馬の様な生き物にテルンは荷車の紐を付けてポンと背中を叩いた。
「テルン、気をつけてね」「変な奴に絡まれるなよ」
テルンを見かけた近所の大人達が声をかけるとテルンは「ああ」と愛想良く答えた。
村の東にある町の《モリューザ》はロンポダから見える程の距離にあった。
荒れた道をテルンとミモはしばらく歩いてモリューザの西の門に入った。
モリューザは高い石垣で囲まれた商業都市で各地から商人や職人が訪れていた。
遠方から訪れる人々は魔物から身を守る為に剣士を同行させていた。
町の中央通りから外れた場所にある武器屋にテルンは入った。
武器屋の主人のゼンナットは昔からの取引先でテルンの父親のガゼムと旧友である。
「おお、テルン。いつもの場所に置いてくれ」
ゼンナットが言うとテルンは「はいよ」と剣を持って店の奥へ入った。
何度か店と外を往復して剣を全て納品した。
「終わったよ」「ああ、ちょっと待ってくれ」
客の相手をしていたゼンナットがテルンに言った。
テルンは黙って頷いて店の中に置かれた武器を見ていた。
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