ガラスの海のアルシエ

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終章 ふたたび僕  こうして、  僕らはまだ、移動を続けている。  それは旅とも呼べない旅だ。  目的もなく、行くあてもなく。  僕らは歩くために歩き、  見るために見て、  何かを記憶するために記憶する。  そこにある意味?  それは訊かない約束だろう?  滅びゆく惑星(ほし)、  幸せの青い鳥は星々のかなたに去り、  歌は歌われず、  物語は語られず、  聖なる水はすべて枯れ果て、  あるのは、静寂、  死せる大地と、ガラスの海と。  そして、また、そこにある、  。    何が継続するのか?  何を継続させるのか?    すべてが未だに曖昧なままだ。  何一つ定まるものがないまま、  僕らはいくつもの朝日を見送り、  いくつもの夜を通り過ぎ、  やがてまた、知らない場所で目を覚ます。  誰もいない惑星(ほし)で。  誰も歌わない惑星で。  。  その言葉が、僕らの神であり、僕たちの聖歌だ。  。  僕らはまだ、たぶん、まだここにあって、  明日もまだ、たぶん、ここにあるだろう。  おそらくその次の日も。  その次も。  資格を持った何かが、  僕らを、また別のどこかにさし招く、  その赤と黒の瞬間(とき)まで。  それがいつになるか。  僕たちは知らないし、  あなた方も、まだ知らないだろう。    あなた方は誰?  いつの時代の誰?  それを知らないまま、僕はまた、何かを記録する。記録している。今日も。  明日もまだ、記録するだろう。  僕はそのように生まれついたし、  だからまだ、は、続いていく。  続いていく。  衰えた太陽と月の狭間の、そのどこかで。  果てしない虚無と虚無の、その間で。  
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