悪夢から覚めるまで

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「あーあ、今日もつまんない1日だったなあ」   でも一応いつも通り、やることはやった。  金子麻美は、 通学路をのんびりと歩いるところだった。  私の朝は、まず起きて、スマホいじって、もう一回寝て、起きて、着替えて、ご飯 食べて、学校行って、ノートはまっさらなまま授業して、それから高野をボコる。  これで1日の大半は終了する。 午前中の疲れとか、だるさとか、イライラとかは、全部高野で発散。ボコリ終わったら全てが真っ白になってリスタート… 「するハズなんだけどなあ・・・」  なんか最近スッキリしない。  高野の反応は十分なハズ。あいつちゃんと保健室にも通ってるし、重症認定されてる、っていう情報をみっちゃん (三浦)から聞いた。  それに、あいつは本当に記憶喪失しているらしく、ボコリ終わって誰かに発見されるか、最近は自力で一目につくところに行くらしい。こないだは、グラウンドの真ん中で倒れてたっけ。 でも、スッキリしない理由はいくら考えてもわからない。  __高野の反応が足りない?  いや、 十分だ。  __もっとボコりたい?  でもこないだまではこれで満足してたし、最近エスカレートしてるハズだし。  __彼氏が欲しい?  いやそれ関係ないし!!  何考えてんだ自分!  まあでも…普通に欲しいなあ…  私は何を求めてるんだろ?ストレス発散?それとも疲れを癒して満たしてくれる優しさ?愛情?それを満たしてる彼氏?  私はモテてないけど、でもそれでも、ブスじゃないと思う。思いたい。イケメンたちは大体恋には興味がなくて、いやそんなことはないかもしれないけど、どちらにせよ平凡な私がその競争に勝ち残ることは無理だ。勝ち残るためのスキルがない。いいところとか、すごいところとか、可愛いところとか…  私にはそんなものはない。  でも、やっぱり私は面食いなんだ。けど、世の女子なんてみんなそうだ。私だって、少しくらい、贅沢してもいいよね…  私の家は、 貧乏だった。  お父さんはお母さんと結婚して家を買って、お母さんが私を産んだ日に、突然亡くなった。  元々貧乏じゃなくて、それなりに贅沢に暮らしていたんだろう。 私は2人の生活を見たことはなかったけど、お父さんの遺品からそのことが伺えた。  お母さんが仏 壇に置いている、シルクのハンカチ。そのハンカチは、2人お揃いで買ったもののよう だ。この間、お母さんが仏壇の同じハンカチと並べて、寂しそうな目で見つめてい た。  それで、今私は、貧乏だ。 両親が共働きだったので助かったが、お母さんはやっぱ り肉体的、特に精神的な負担が大きくて、お父さんが死んでから1ヶ月くらいは、ろくに仕事もできないでいた。  その1ヶ月は、私がなんとかバイトして生活を支えていた。もちろん全部は補い切れないから、たくさんの人に支えてもらった。バイト先の仲良い先輩や友達とか、近くの八百屋さんからは余り物の野菜やお料理までいただいた。  でも、1日2食は全部自分で作った。自分のお昼は、ご飯を買うのも作るのも面倒だしお金がかかるので抜きにして、とにかくお母さんに元気になってもらえるようにと、美味しいご飯を作っていたつもりだ。  その後お母さんはだんだん元気を取り戻して、あの頃のように、元気いっぱいの、笑顔なお母さんになった。でもやっぱりお父さんが働いていた分までは、お母さんには稼げなかった。  そこからうちは3LDKもあった東京の一軒家を手放し、小さなマンションに移り住んだ。そのマンションは、学校からもバイト先からもちょうどいい距離にあったし、家賃も高くはなかった。うってつけの物件だと、お母さんと決めたマンションだ。  ここの大家さんは優しくて、何より小さいので住人の把握もされやすかったし、お隣さんともすぐに仲良くなった。  今では、このマンションは私の「あったかい家」だ。 そして今日も…  ガチャ 「ただいま~」
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