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画面の向こうの君
最近、私はボーッとしていた。
毎日が楽しすぎて、学校の授業にも集中できないでいる。
スマホを見ない日はない。彼との時間がただただ楽しくて、他のことなんてどうでもいい、って思っちゃうくらい。
「ねえ、聞いてる?」
いきなり、誰かに声をかけられた。
またボーッとしていたみたいだ。誰だろう?
「ほえ?」
声の主の方を見た。
「…なんだ、みっちゃんか」
「何?期待してた?」
してないし、と寝ぼけながら精一杯反論した。
「でもさあ」
早(早川)が切り出した。
「どーして最近ぼーっとしてるし、高野もボコんないの?」
みっちゃんが頷く。
「確かに。この2つって何か関係があるの?」
「うーん…」
なくはない。ボコってないのはストレスがないからだ。そして、ストレスがないのは…
「…NICOのおかげか」
「え?」
2人には聞こえなかったらしい。説明も面倒だし、まあこれで良かった。
とにかく、今すぐにでもNICOと話したい。我慢の限界だ。
休み時間の始まりを告げるチャイムは、私の耳に心地よく響いた。
「…ねえ、思ったんやけど」
「ん?どした?」
早川と三浦は、休み時間、廊下の隅に突っ立っていた。
「麻美さ、何か最近付き合い減ったっていうか…避けられてはないけど、近づくな、邪魔するな、みたいな冷たい感じじゃない?」
いじっていたスマホを切り上げ、みー(三浦)を見る。
「…確かに、そうかもやなあ」
「さっきも、言葉ではないけど…雰囲気がね」
「うん…何かなあ…」
早川は、廊下の天井を仰いだ。
雰囲気がどうこう言っても、本人に聞いたところで何になるのだろう。きっと適当に、曖昧にあしらわれるだけだ。そもそも、うちらの勘違いってこともある。理由がくだらないことかもしれないし。
「…まあ、そんなに気にすることないんじゃない?本人もそこまで変わった感じとかないしさ!」
みーがこちらを睨む。
背筋がゾクッとした。
「早(早川)はさ、麻美のこと心配してないわけ?」
違う。めんどくさいだけだよ。
「…そうじゃなくてさ。麻美も聞かれたくないかもしれないじゃん。そういうこと無理矢理聞くのかわいそうじゃない?」
みーが口をつぐむ。
「…そうかもね」
「とりあえず、教室戻ろうよ」
「うん」
「うは~~~っ!」
この、学校終わりにベッドに飛び込む瞬間が、すごく好きだ。学校が終わって、自分だけの世界に入り込める。
「んーっと、今日は来てるかな~」
最近の日課。
学校終わりベッドに飛び込み、NICOとメールをすること。
最近暑いから、アイスも食べながら。
『NICO~学校終わった?』
既読はつかない。
学校が終わってないのかも。ま、しばらく何かするか。
と、数学の宿題に目が行く。
それの存在に気がついてしまった自分を責めつつ、仕方なく机へ向かった。
どれくらい時間が経っただろう。
頭がボーッとする。私、寝てた?
もう、さすがに学校終わったよね。
トーク画面を開くと、そこには色々送られてきていた。
『ごめん、寝てた( ̄▽ ̄;)』
とりあえず、返信はしておかないと。
「あれ?」
こんなに時間経ってる…
机に向かってから4時間…!
ノートには、しっかりと文字。課題の範囲までやっていたらしい。記憶はないが、たぶん途中で疲れて寝たんだろう。NICOに迷惑かけちゃったかな。
「おっ」
返信があった。
『そうなん?w』
『マジごめん(;´д`)』
『いーよいーよ、大丈夫』
『ねえ、あのさ…ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど』
『何?』
『えっと…』
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