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描ける.1
一翔と問題の候補を作ったのが金曜日、土日はずっと新しい小説のアウトライン作りに集中し、月曜と火曜は一翔とクイズの問題の取材をして。
あっという間に水曜日、ホームルームの時間になった。
「では、クイズの問題を発表します」
俺は教壇に立って柄にもなく司会みたいな顔をしてた。一翔は後ろで問題候補を黒板に書いている。
一翔の字は丁寧で見やすい。
それだけじゃない。
問題作りのために先生や部活の部長にした取材の時も、一翔は話す俺の後ろでにしっかりメモを取り、完璧な取材ノートを作っていた。
一翔は前面に出て活躍するタイプじゃない。けど、後方・補佐役には適任だった。
一翔が後ろでちゃんとしてくれているから、俺は取材相手にする質問に集中できた。
一翔は……学業は成績上位に入ってるはずだ。問題作る時もオリジナリティのある視点で作ってたし、もしかしなくても結構賢い?
それに、内気そうなおどおどした表情に騙されるけど、よく観察すると可愛い顔してる。一・二年の時一軍にいたのも、伊達じゃないか。
春日の機嫌を損ねず、もうちょっと堂々としてたら、それなりにクラスで地位を築けたんじゃないのかな?
一翔が書き終えた問題を見てクラスメートたちがちょっと騒めいた。
「二十案ありますから、これから十問に絞りましょう。読み上げますから、どれがいいか挙手してください」
俺は言った。
クラス担任が黒板の問題を見て感心したような顔をしている。
まあな。一翔がどっかで見つけてきた過去問の類似にならないよう気をつけたし。どの設問を取っても、それなりに話題性のある面白い問題になってるんじゃないかな?
「秋宮。今日はうまくいったよな」
「冬麻君、そうだね。作った問題が好評だったから、良かった……じゃ、先帰るね」
「! おい。待てよ!! 秋宮!?」
ホームルームが終わり下校の時に捕まえようとした一翔は、俺を振り払うようにさっさと駆け去っていった。
拒絶された。
どうして、一翔はあそこまで頑なに俺を拒否するんだろう? 味方にしようと思わないのか? いや、俺が一翔を絶対に助けない事をわかってる? それとも俺を巻き添えにしたくないって気を使ってる? 助けもしないクラスメートにそんな気使うか?
ならいっそ、見殺しにしてる俺を心の中では嫌ってる方が当たっているかも。
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