架ける.2

1/1
前へ
/36ページ
次へ

架ける.2

「ああ、緊張する……お客さん楽しんでくれるかなぁ?」 「意外といっぱい入ってるな」 「春日さんもサルも上手くやれるか?」 「大丈夫だってば! あの二人なら!」  学園祭二日目昼過ぎ、体育館の舞台袖にはクラスメートが溜まっていた。  今からクイズ大会が始まる。司会の二人と問題文を提示する黒子四人、会場の整理をする十人ぐらいの男子、それ以外の役割のないクラスメートは舞台のカーテンの影に集まっていて、舞台袖は渋滞中だ。 「秋宮は?」 「秋宮さん? 知らないけど」  俺はその顔の中に、一翔がいないのが気になった。自分の成果ぐらい確認したらいいのに。  まあいいか。俺がバッチリ見届けて、報告してやろう。  そして、クイズ大会は予想以上に盛り上がった。  春日の司会は見事だったし、サルは場を沸かせるのに慣れていた。  問題文も好評だったようだ。春日が問題文を読み上げるとそのたびに、笑いが起こったり、驚愕の声が上がったりする。  俺はほっとしていた。ちゃんと役目は果たせたし、それにこれなら、一翔の評価だって良くなるんじゃないか? せめて春日が一翔を見直してイジメなくなればいい。  一翔と春日の間に、小さな橋でも架ける(かける)事ができれば……。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加