(仮題)魔女と聖女の踊る国.38

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(仮題)魔女と聖女の踊る国.38

「クリス。本当にそれでいいのか?」 「わかってるでしょ? ローゼル。この国には魔女と聖女両方の力が必要なの。魔力を供給する魔女とその魔力をコントロールする聖女」 「でも、神殿は歴代の魔女をずっと閉じ込めて、その力を吸い続けていただろう? それなのに許すのか? 許せるのか?」  ローゼルに問われたクリスは少しだけ、目を瞑った。目を瞑るとすぐに瞼の裏に、燦然と光を浴びて笑うソフィアの姿が浮かび上がってくる。  その姿が、クリスの赦しであり救いだった。  たとえ、自分を孤独な塔の上に追いやった理由だったとしても。  ソフィアの姿だけが、クリスに日の光の暖かさを伝えてくれた。  それは……。塔から逃れ、髪を梳かし、綺麗な服を着て、地面に足をつき、存分に太陽と月の光を浴びれるようになった今でも変わらない。 「許せるよ。私には聖女が必要だから」  本当は、聖女だからソフィアを必要としてるんじゃない。ただ、二人でたわいもない話をして、笑って、お互いを尊重し合える。……ソフィアと友人になる。それが、クリスにとってこの世界に本当に受け入れられたと、実感できる唯一の方法だった。  クリスにとっては救世主のローゼルの存在すら、ソフィアの前では霞んでしまう。  もしかしたら、聖女は自分の存在意義の全てを破壊した魔女を恨むかもしれない。  神殿の嘘を暴き、王権を打倒し、魔女が支配する世界を実現させようと行動を起こしたクリスとローゼルを、憎み許さないかもしれない。  それでも、クリスはソフィアに手を差し出し続けるつもりだった。  ソフィアに自分の手を取ってくれと言い続けるつもりだった。  ……。 「魔女! 私は決してお前を許さない! なぜ、お前が私の元に跪かない!? なぜ、この国を壊そうとする!? 私を壊そうとする!!」  聖女のブロンドの髪が燃え盛る炎を写し、オレンジに染まっている。  歪んだ唇、涙の浮かんだ瞳、その髪は振り乱れ、焼けこげたドレスと相まって、聖なるものだと長年取り繕ってきた仮面が剥がれ落ち、間違いなく『聖女』がただの人間だと如実に語っていた。  中央神殿の大伽藍は今まさに燃え落ちようとしていた。  聖女以外の聖職者は全員毒を煽り、神殿のそここに骸が蹲っている。  聖女は死ねないのだ。聖女である役目を降りない限り。そしてソフィアはその決断ができない。 「ソフィア。私、貴女を壊そうとしてない。ただ、間違ってる世界を正したいだけ」  クリスは、祭壇の上で神の像に縋るソフィアに手を伸ばした。 「だから、一緒に来て。世界には魔女も聖女も必要なの」  この話の展開、違和感があった。一翔に救いを与えたくて書いていると認識し始めているからからなのか、それとも他の理由か? キャラの言動を嘘くさく感じてしまう。  それでも、誰かの救いになりたかった。  一翔を励ましたかった。それがどんなに傲慢な思いだとしても。  でも。
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