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これ以上、怖い事を考えるのは止めよう。 ファンタジーなら異種属とのお付き合いもありだけどさ、キルテは『恋愛』とか生易しい意味で言ってるとは思えない。 「キルテ、最後に1ついいかしら?」 「はい。」 「貴方の師匠の死体はどうしたの?」 魔物のままだったなら回収されているよね。それなら、報告書か何かを作成しているかもしれない。 「俺が斬った後、師匠は灰になりました。だから、俺は殺人で捕まらなかった。各兵団長クラスには、灯火の魔法がかけてあります。死ねばそれが消えるので、死亡した事は知られてると思います。」 「その灰はどうしたの?」 「集めて庭に埋めました。」 「あの邸にあったの!?」 「はい、ただ少し……」 「少し、何?」 灰…っていう返答から、既に嫌な予感しかしないんだよね。 呪われた体からできた灰…。 キルテの邸を捜索した日の帰り道、私は魔物に襲われた。そして地下老に入れられ、王から呼び出された。 その馬車に同乗していたのは人間じゃなく人の形をした物体で、それが消えた時に残っていたのは灰のような物。 私に魔物が寄ってくるのは『キルテの部屋の暖炉の灰をかぶったからじゃないか』って疑ってた。もし私についた灰が師匠の物なら、出来ないと言い切る方が難しいと思う。 キルテに付いても効力はないのかな?私は同じ呪いをかけられた事があるから反応しただけ?まだ解らないけど、水で灰を洗い流したのは正解だったわ。 「キルテ、私が貴方の邸を探った時、灰に異常は無かった?」 「あの日、灰を埋めた所を掘り返したような跡が。気になったのでフェルト様が帰ってから調べましたが、灰の入った壺に異常はありませんでした。」 けど、何かあると思ったから、一旦話が途切れたんだよね。 「その灰にまだ呪いが残ってるかもしれないと、そう考えてる?」 「……」 「最近、私以外の来客や、新しく入った使用人はいるの?」 「解りません。俺はあの邸に帰る事は殆んどありませんから。」 息子を殺そうとした父親の所有物に、わざわざ帰りたいとは思わないよね。 「わかった、ありがとう。話を聞きたかったからって、酷い事を言ってごめんなさい。」 「いいえ、俺も師匠の死因が解ってスッキリしました。」 情報が増えたけど、パズルは全然埋まってない……。
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