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キルテと話終えて村を出ようとした時、突然地面が揺れ始めた。 「キャッ!?」 ドーンと突き上げるような振動の後、立ってられない程大きな揺れが起きて、乾燥しきった地面にヒビが入った。 このままじゃ、ひび割れに落ちる!! 「フェルト様、俺に掴まってください!!」 キルテが私のウエストに左手を回して、グイッと抱き上げた。 地震が続く中、キルテはバランスを崩さず地面の亀裂を避けて走っている。私はキルテに抱きつくしか出来なかった。 暫くして地震はおさまったけれど、一難去ってまた一難。 「キルテ、土の中にいる…あれは何?」 「(うなぎ)のような魔物です。」 (なまず)じゃなくて(うなぎ)なんだ……とか、くだらない事を考えていると、土の中から大きな口を開けた(うなぎ)が出てきた。 食べられるっ!! そう思ったけれど、キルテが素早く(うなぎ)の頭を切り落としてくれたので助かった。 「大丈夫ですか?」 「うん……」 前にも思ったんだけどさ、魔物との戦いって、もっとこう……、命懸けの、ギリギリの戦いなんじゃないの? 地震まで起こして登場した巨大鰻の立場がないよね。あまりにも簡単すぎる。 これじゃ、キルテが主役の無双ラノベとしても成り立つ気がする。 「魔物って弱いの?」 「剣で倒せる種が相手なら、強いと感じた事はありません。」 「魔法でしか倒せない魔物もいるよね?それは、今までどうやって倒していたの?」 「魔道具です。それが尽きれば、もう勝てません。」 勝てません…って、キルテが(いさぎよ)すぎて怖いよ。 そろそろミネルバの能力の影響で、主役達が魔法を使えるようになる頃なんだよね。けど、アレックスが私に絡んで来ないって事は、私に見せつけるほどの魔法が使えてないのかな。 「フェルト様、もしかして貴女は魔物を喚び出す魔法でも使えるのですか?」 「え?」 「魔物の遭遇率が高すぎる。」 「それはこっちの台詞よ!!」 まさか、私がキルテに疑われるなんて。
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