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大失敗
「はぁ…はぁ……っ」
剣術の練習というのは、思いのほかキツイ!……というか、シュナが非力すぎる!泰子の体であれば、剣を片手で持つくらい簡単なのに!!
私は大きな鍬を持って、長靴で筍掘りをしていたのよ。剣術の練習より、斜面で筍を掘る方が足腰にくる。それでも、毎年の事だし苦じゃなかった。むしろ、山に逃げる時間が出来て嬉しかったくらい。泰子の体はハイスペックだったと、今はしみじみ感じる。
「キルテ、貴方に剣術の指導を頼んでおいてなんだけど、暫くは止めておくわ」
「そうですね。シュナが強くならなくても、私が側にいれば死ぬ事はありませんから」
キルテが『やっぱり』って言いたげな顔をしてる。私が諦めたと思ってるよね。それはムカつく。
「まず、剣術より筋トレするわ」
「キントレ?」
「筋力アップのためのトレーニング。略して筋トレ」
「……筋トレ」
「嫌そうな顔をしなくても、トレーニングには付き合う必要はないわ。部屋で出来るから」
「俺は今日から侯爵邸に住み込む事になりますので、お望みであれば教えますが」
え?
「うちに来るの?」
「そうしなければ、護衛出来ませんから」
「護衛って、学校や外出時だけじゃないの?」
「邸で狙う方が簡単で確実ですから、重点を置くなら邸の方ですね」
「自分の家で狙われるの?」
「何を驚いているんですか。言いましたよね。俺は父親に毒を盛られて殺されかけました……と」
そうだけど、私はキルテが邸にいる事の方が安心出来ない。キルテの犯人疑惑が晴れたわけじゃないし。
「四六時中は無理でしょ?私は女だし、キルテは男、邸にいても意味がないというか……」
「邸では俺は食事や移動時の付き添いのみ。シュナの部屋の中の護衛には、上官のペコ・リーリンがつきます」
……ペコ・リーリンって、主役の1人だ!読者からはペコリンって呼ばれてる人気女騎士。
彼女は魔王討伐パーティーに加わるのに、私の所へ来たらダメだよね。ミネルバの近くにいないと。
楽して利を得ようとした、私が馬鹿だった。
鴨ネギ大作戦、今のところ大失敗!!
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