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「キルテ、疲れたから休憩したいわ。どこかいい場所はある?」
ここは演習場。城はすぐ側。
どうにか城中にもぐり込みたい!ネロは今日、テノールに付いて公爵邸に行っているからいないし、絶好のチャンス。
「休憩所はありますが、シュナがいるとまわりが……」
「気が休まらないと言いたいのは解るわ。だから、別の所で休憩しましょう。例えば、城にある貴方のお部屋とか」
王太子の護衛だから、部屋くらいあるよね。
「俺の部屋にシュナを入れるのは無理です」
「いいじゃない」
「駄目です」
「一緒に部屋にいるのが駄目という理由なら、私一人でキルテの部屋で休む事にするわ」
「そういう事ではなく……」
ここは何としても押し通す!!
魔王召喚の方法を書いた資料があるとすれば、城か神殿だと思う。シュナが神殿へ出入りするのは難しい。けど、王城ならアレックスと約束がある日は入れる。そう考えれば城でほぼ確定!
「私は今、訓練兵の格好をしているから、誰も女だと気付かないわよ」
赤髪を隠す為にウィッグも持ってきているし、準備万端なんだから。
「訓練兵の格好なら汚れても問題ないので、そこの木陰で休みましょう」
木陰って、休憩室ですらない……。
「何故そんなに嫌がるの?」
「その質問こそ何故です。『ミネルバとアレックス様が仲良くしているのはおかしい』と仰っていましたよね。なのに、シュナは俺の部屋に入るんですか?」
確かに言いましたけども……。
このまま、ここで問答していても何も解決しない。キルテを味方につけよう。
「王城の書庫を探りたいの。キルテの師匠が魔物にされた呪術の書かれた本は、きっと城にあるから」
キルテだって師匠の殺された原因を突き止めたいと思ってるんだし、絶対断らない……はず。
「王城にあるという確証は何ですか?」
「確率が高い所を調べるのが基本でしょう」
「……俺の部屋と書庫は真逆です」
「王城に入れるなら問題ないわ」
「はぁ……。書庫は訓練兵が入れる場所ではないし、申請をして許可がおりなければ扉を開ける鍵を受け取れません。俺は今、王太子付き護衛ではないので、許可はおりないでしょう」
アレックスの護衛であれば何とか出来たって事?……鴨ネギ作戦の失敗が、こんな所にも影響するなんて、嘘でしょ。
キルテに王城の書庫を探りたいと知られただけで、何の進展もないなんて最悪。
「……書庫に入るなら、別の方法があります」
「何っ!?忍び込む?」
「いいえ、シュナがオルセン様に頼んで下さい。それだけで構いません」
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