トリトン王子

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トリトン王子

「リーリン、キルテ様以外の方が飲むお茶を入れてもらえるかしら?」 「すぐにお持ちします」 本当は冷たいお茶が飲みたいけど、ここじゃ無理だよね。暑いし、窓際に座らせてもらおう。 窓を開けて外を見ていると、にゅっと男の子の顔が下から出てきた。 「うわぁっ!?」 驚いて私は椅子から転げ落ちてしまった。 「いじわる女!何でここにいるんだ!!」 いじわる女……って私? 誰?この黒髪の少年は……。 「トリトン様、また脱走してきたのですか?」 「脱走じゃない、お散歩だし」 トリトンって、たしか前にマフィネスが言ってた子かな。って事は、もしかして王子? 脱走って、この子にも護衛がついてるはずだよね。どうやって逃げ出してきたんだろ。 「トリトン様ーー!」 「王子ーー!」 遠くから王子を呼ぶ声がする。 「トリトン様、護衛が探していますよ?」 「さがしてない。早くひっぱれ!いじわる女!」 引っ張れって、隣にいるキルテじゃなく『いじわる女』に頼むんだ。 「かしこまりました。」 王子の命令に背くわけにもいかないので、私はトリトン様の手をぎゅっと掴んで、窓から休憩室へ入れた。 ん? 王子が触っていた窓枠に、砂が沢山ついてる。さっきまで、こんなのなかったのに。 よく見ると、王子の服や髪にもついてる。逃げる時に砂場でも通ってきたのかな。 「王子、どうして逃げてるんですか?」 「逃げてない。お散歩だし。」 お散歩の時間も護衛は一緒だから、一人で居る時点で逃げてるんだけどね。 「フェルト様、王子と奥の部屋へ。」 もうすぐ護衛が来るって事だよね。私は王子を抱えて、ペコリンのいるキッチンへ向かった。 「フェルト様と王子……?どうしてここへ?」 「うん、ちょっと見学に」 キッチンに来てトリトン様を腕から下ろそうとしたけど、ガッシリしがみつかれて下ろせない。シュナの力ではそんなに長く抱っこ出来ないよ!
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